Mowat-Wilson症候群は特徴的な顔貌と頭頚部の所見、精神運動発達遅滞、小頭症、ヒルシュスプルング病または慢性の便秘、てんかんを主徴とする症候群で、顔貌や身体的特徴で診断可能な先天異常症候群です。
本症候群の最初の報告は、Mowat-Wilsonらの誌上発表(1998)よりなされましたが、これより先に、本研究費の申請者が所属する愛知県心身障害者コロニー中央病院の医師(山中、長屋ら)が第15回日本小児遺伝医学会(1992年)で報告しています。
2001年に本研究の申請者である若松が原因遺伝子を特定して (Nature Genetics, 2001)確定診断が可能になりました。胎生期の神経板の形成と神経堤細胞の成熟・遊走などに関与する ZFHX1B(ZEB2)遺伝子の片側のアリルの異常(ハプロ不全)により、中枢神経系、腸管神経節細胞、頭部と体節に形成(機能)異常が起こり、発症すると考えられています。
しかしながら本症候群はまだ十分に医療関係者に知られていないために診断されていない患者さんが多く存在すると思われます。正確な診断を得ることにより、より良い対応が可能となり患者家族の方々の生活の質の向上に資するものと考えています。さらには治療につながる研究がすすんでゆきます。
厚生労働省難治性疾患克服事業の一つとして、疾患について患者家族の方々、医療関係者、教育療育関係者の理解を深めて疾患の頻度や実態を把握するための調査研究を行っています。得られた成果を還元するためにホームページを通じて情報提供をすすめてゆきます。