栄養と発育
RTSの患者の多くは乳児期に栄養摂取の問題が生じます。全身の筋緊張低下、胃食道逆流症、反復性の上気道感染症が関係します。ただし、栄養の問題は1年ほどで消失します。かえって学童期、思春期に食欲旺盛になり、肥満傾向がみられることがあります。
出生時は、身長、体重、頭囲は標準と大差ありません。乳児期は体重増加不良が多いです。男児は学童期から、女児は思春期早期から体重過多が始まります。男児、女児ともに思春期の成長のスパートがないため、成人身長の平均は男性152cm、女性が143cmとなります。
小児期は6ヶ月から12ヶ月ごとに身長、体重、頭囲の測定を行い、成長曲線を記録し、標準と比較します。成長障害の場合、純粋にRTSによる成長障害なのか、栄養障害や合併症がないか検討し、そうした原因がなければ成長ホルモンの検査を行います。通常、成長ホルモンの分泌が少ない場合、徐々に平均と身長の差がひろがってきます。
小学生のころに急に身長が伸びる、陰毛が生える、乳房が大きくなる、いった症状がみられた場合、思春期早発症の可能性があります。内分泌専門の医師の診察が必要です。
適切なカロリー摂取ができない場合は経鼻チューブや胃瘻による栄養確保を検討します。エンシュアなどの栄養剤を使うこともあります。反対に食欲過剰の場合は、食事を減らし、低カロリーでバランスの良い食事を工夫します。肥満による合併症には、食事療法と運動療法となります。食事の楽しみを失わないような工夫が必要です。栄養士による栄養相談を受けるとよいでしょう。
発達と行動
RTSの患者は一般的に精神運動遅滞があります。以下の表にRTSと標準的な運動発達との比較を示しています。
RTSと標準的な運動発達との比較
ルビンスタイン-テイビ症候群 | 標準 | |||
発達の指標 | 平均月齢 | 範囲 | 平均月齢 | 範囲 |
笑う | 2.5 | 2~6 | 2 | 2 |
寝返り | 10 | 4~18 | 6 | 5~7 |
おすわり | 16 | 9~24 | 7 | 6~8 |
はいはい | 19 | 12~36 | 9 | 8~10 |
1人立ち | 29 | 11~80 | 9 | 8~10 |
独歩 | 35 | 18~54 | 14 | 12~15 |
(Hennekamら1992年)
言語面に関しては4歳までには2~3語文が出で、徐々に言葉が増えます。遅いと7歳程度までかかることもあります。鼻にかかった声でハイピッチです。早口で、断続的なリズムです。言語性IQの割には、コミュニケーション能力は良好です。言語聴覚士によるST(言語療法)も有効でしょう。
場合によってはサイン言語や他のコミュニケーション手段を用います。平均IQは36(範囲25-79:Hennekam)、あるいは51(範囲33-72:Steven)の報告があります。動作性IQは言語性IQより一般に高いです。年齢が上がるにつれ全体のIQは下がる傾向がありますが、退行するわけではありません。
RTSの子どもは、愛嬌があって性格は温厚ですが、注意集中力の持続が短い、頑固、忍耐不足、気分変調といった部分もあります。年長児では、行動は難しくなり、強迫的な症状が出ることがあります。思い通りでないといらいらする場合がでてきます。社会性は高いですが、自閉症的な行動が見られることがあります。年齢が上がるにつれ、人ごみ、騒音を避ける傾向があります。
幼児期には新版K式発達テストなどを6ヶ月から半年ごとに行います。年長者ではWICSⅢによるIQ検査を行います。定期的な聴力検査と眼科検査が必要です。
ゆっくりとした言葉かけ、絵本の読み聞かせなどは重要です。向かい合ってじっくりと応対する時間が大切です。保育所など小児の集団は発達促進に有用です。
言語訓練、理学療法、作業療法、教育ガイダンスなど個別の療育プログラムが必要です。言語表出が困難な場合、サインやジェスチャー等でコミュニケーションをとる方法(マカトン法など)があります。異常行動が生じたときは、胃食道逆流症や齲歯のような医学的問題をチェックする必要があります。行動問題において、薬物治療が有効なことがあります。言語発達が極度に遅く、対人関係を作りにくい、こだわり行動がある場合は自閉症の合併を考慮します。
就学にあたっては、地域の小学校で特別支援教育を受けるのか、支援学校に入学するのか、という選択肢になります。担当医や心理職との相談や学校現場の見学などが必要でしょう。先輩の親の意見も大いに参考になります。