疾患情報
脳クレアチン欠乏症候群(cerebral creatine deficiency syndromes: CCDSs)には①グアニジノ酢酸メチル基転移酵素欠損症(Guanidinoaceteate Methyltransferase=GAMT欠乏症)、②アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素欠損症(L-Arginine:Glycine Amidinotransferase=AGAT欠乏症)、③クレアチン輸送体欠損症(Creatine Transporter=SLC6A8関連欠乏症)の3疾患が知られている。 概ね、①頭部MRS(magnetic resonance spectroscopy=MRS)と、②尿中creatine/creatinine測定で診断を行う。頭部MRSで大脳creatine欠乏が全ての脳クレアチン欠乏症候群(CCDS)に認められる。尿中creatine creatinine測定で、①グアニジノ酢酸メチル基転移酵素欠損症、②アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素欠損症はcreatine/creatinine比が正常だが、③クレアチン輸送体欠損症では高値を示すことから診断できる。
精神遅滞は全人口の1から3%の頻度で見られ、このうち③クレアチン輸送体欠損症は男性の遺伝性精神遅滞の中では0.3から3.5%最も頻度が高いことが知られており、世界に100万人以上が発症していると推定されている。日本での詳しい発症件数はまだ明らかになっていない。
クレアチン/リン酸クレアチン系は,脳や筋における化学的エネルギーの細胞質貯蔵の緩衝系として働く。このためクレアチン生合成や輸送の障害は脳内クレアチン欠乏をきたし、精神遅滞、言語発達遅滞、てんかんを引き起こす。①グアニジノ酢酸メチル基転移酵素欠損症と②アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素欠損症はAGAT遺伝子の変異により発症し,常染色体劣性の遺伝形式をとる。③クレアチン輸送体欠損症はSLA6A8関連遺伝子の変異により発症し,X 連鎖性の遺伝形式をとるが,男性及び女性ともに発症する。
精神遅滞(軽度~重度)、言語発達遅滞、てんかん、自閉症、錐体外路症状.クレアチン輸送体(SLC6A8)欠損症はX連鎖性疾患であり,男性が典型的な症状を呈するが,女性も様々な程度で症状(精神遅滞,学習障害など)を呈しうることに注意が必要である。
特に、グアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症においては、早期のクレアチン投与が有効であり、治療可能な精神遅滞として注目される。クレアチン輸送体(SLC6A8)欠損症に対しては有効な治療法がないが、cyclovreatineの有効性がマウスで示されている。
脳クレアチン欠乏症候群の診断には、代謝異常(疑)の精査のため尿中クレアチン検査が必要です。
検査項目・検査値は患者さまがご持参される「主治医の先生へ」をご参照ください。
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