VATER症候群(VATER連合)とは

VATER症候群(VATER連合)は、V=椎体異常、A=肛門奇形、TE=気管食道瘻、R=橈骨奇形および腎奇形という5徴候の頭文字の組み合わせで命名されている。VATER症候群(VATER連合)において、複数の臓器において先天異常が発症する機序は不明である。異常を持つ臓器の発生時期の多くが、胎生期のごく初期(原腸形成期)であることから、この時期に胚(胎児)の広い範囲に障害が起きていると推測されている。
全国で系統的な調査は行われたことが無く、実際の患者さんの総数は明らかにされていません。

発症機序 (医師向け情報)

不明である。
VATER症候群(VATER連合)を部分症状にもつ疾患として染色体異常症(18トリソミー・13部分モノソミー等)および母体糖尿病は重要である。小頭症や顔貌異常のある症例では染色体検査を考慮する。母親の妊娠歴について注意する。ただし、大部分のVATER症候群(VATER連合)の患者に染色体異常や妊娠中の催奇形物質への曝露はない。

鑑別診断 (医師向け情報)

VATER症候群(VATER連合)に属する奇形を2種類以上認めたら、他の異常が無いかどうか注意して診察や画像診断を進める。たとえば、食道気管瘻を有する児の37%が先天性心疾患を有すると云われる。また橈骨側奇形や鎖肛を持つ児では、心臓超音波検査、脊椎X線撮影、腎超音波検査を行うことが望ましい。また、Fanconi貧血(心臓、四肢、椎体の異常)、Holt-Oram症候群(心臓、上肢とくに橈骨側の欠損)Townes-Brocks症候群(拇指の異常、鎖肛、鰓弓由来組織の低形成)などの遺伝性疾患を除外する必要がある。これらの疾患が否定された場合、「VATER症候群(VATER連合)」を単一の疾患としてみなす。

症状 (医師向け情報)

連合とは、高頻度に併存する奇形の組み合わせを指す。
VATER症候群(VATER連合)は

  • V=椎体異常(vertebral)
  • A=鎖肛・肛門狭窄(anal)
  • C=心奇形(cardiac)
  • TE=気管食道瘻・食道閉鎖(tracheo-esophageal)
  • R=腎奇形(renal) ・橈骨側奇形(radial)

の組み合わせを指し、頻度の高い多発奇形の1つである。
L=四肢奇形(limb)を含め、VACTERL連合と称することもある。

ときに合併する症状 (医師向け情報)

合併症として、成長障害、斜頚、側弯、尿路感染、潜在性二分脊椎、神経因性膀胱などに注意する。
水頭症等の中枢神経奇形。中枢神経奇形を合併する時は染色体異常症や遺伝子異常(ZIC3変異等)を考慮する。

経過・治療 (医師向け情報)

気管食道瘻または複雑心奇形を有する児では、新生時期・乳幼児期の死亡率が高いが、治療が成功すれば生命予後は悪くない。
頭部に異常を認めない場合の発達予後は良好であることが多く、児が十分な教育を受けられるように配慮する。
橈骨側の先天異常に対しては整形外科的治療を行う。手術による外観の矯正・機能の改善が基本となる。将来的な自立をめざして、欠損している指での機能訓練を幼少期から行う。 

発達遅滞の有る症例については、Fanconi貧血を除外する。染色体断裂試験(diepoxybutane等)によりFanconi貧血の確定診断が可能である。Fanconi貧血のある場合、骨髄移植の適応となる場合がある。