Rubinstein-Taybi症候群とは

 Rubinstein-Taybi(ルビンスタイン-テイビ)症候群(RTS)は特徴的顔貌、幅広の母指、幅広い大きい手足指、低身長、精神運動発達遅滞などを認める先天性症候群です。臨床所見から診断が可能です。その他の、眼科疾患、停留精巣、先天性心疾患、腎奇形などの合併症がみられます。CREBBP遺伝子の変異が原因となることがわかっています。

 1963年にJack Rubinstein(小児科医)とHooshang Taybi(小児放射線科医)が「幅広い手足の親指と顔貌異常」という題で7症例を報告したのが始まりです。症候群と名付けられるゆえんは多彩な症状を共通で持つという点にあります。ほとんどの例で家族内発生のない孤発例ですが、親子例の報告が数例あるため、常染色体優性遺伝と考えられました。この疾患の原因は、16番染色体短腕の16p13.3に位置するCREBBP遺伝子です。他の責任遺伝子もわかっています。

有病率

 オランダで国家的に長期的に行われていた調査で、有病率は125,000人に1人と言われています。発症に男女差はみられません。人種間に大きな差はないと考えられています。他の疾患の患者数と比較する方法で、日本でのRTSの有病率を調べました。その結果、出生15,000人から30,000人に1人と推測されました。日本では1年に50人前後のRTS児が誕生していることになり、全年齢層で数千人のRTSを持つ方がいると思われます。ただし、正確な診断をうけていない方も少なくないようです。

病因

 多くは家族内発生の見られない孤発例です。親子例が数例あるため常染色体優性遺伝疾患と考えられました。1999年に染色体16p13.3を切断点とした相互転座の孤発例を神奈川県立こども医療センターの今泉先生らが報告し、16p13.3に位置する遺伝子CREB-binding protein(CBP)が単離され、RTSの責任遺伝子であることが証明されました。CBPはcAMP によって調整を受ける遺伝子発現にかかわる核蛋白です。両親からひきついだ遺伝子のうちの片方の変化で発病するので、優性遺伝であることが分子のレベルでも証明されました。

遺伝

 RTSの診断は、特徴的な顔貌と四肢の特徴といった臨床症状でおよその診断が可能です。責任遺伝子領域をカバーするプローブに用いたFISH法による解析で、CREBBP遺伝子の微小欠失を証明するか、責任遺伝子の塩基配列の変異を証明することで遺伝子診断が可能ですが、FISH法でわかる欠失検出頻度は患者の数%以下で少ないです。遺伝子塩基配列の変異検出頻度は臨床症状で合致する面の多い患者さんでは70%です。遺伝子異常の型と臨床症状との相関は強くありません。診断はあくまで臨床所見によるべきであり、遺伝子変異がない場合もRTSの診断を否定できるわけではありません。
 遺伝について不安な場合、遺伝カウンセリングをうけられることをおすすめします。

鑑別診断

 RTSの所見の組み合わせは特徴的で、典型的な場合の診断は難しくありません。しかし、新生児期すぐには診断がわかりにくいこともあります。
Saethre-Chotzen症候群、Cornelia de Lange症候群、Floating-Harbour症候群、Coffin-Siris症候群などが似ています。幅広い親指は頭蓋骨癒合症(Apert症候群、Pfeiffer症候群)でも見られます。短い親指と短い指はtypeDの短指症とGreig症候群で見られます。頭蓋早期癒合症の有無、顔貌上の相違により鑑別できます。