本研究班の研究結果の抜粋

わが国の患者数

全国調査による患者数の推定

全国の小児遺伝学会員(臨床遺伝専門医、約180名)に質問紙を送付し、過去3年間に所属施設を受診したRubinstein-Taybi症候群ないしRubinstein-Taybi症候群の疑いの患者数の調査を依頼しました(一次調査)。患者ありと報告した学会員に、調査票を送付し、詳細な臨床情報を収集しました(二次調査)。調査手順は「難病の患者数と臨床疫学増把握のための全国疫学調査マニュアル第二版」に準じた。二次調査にあたり、主任研究者の所属施設の倫理委員会にて「Rubinstein-Taybi症候群の臨床診断基準の策定と新基準にもとづく有病率に関する調査」を申請しております。

 

結果

一次調査:症例有りとの返答のあった34施設(114症例)

二次調査:臨床症状に関する詳細な二次調査票を送付し、回収された72症例の詳細な臨床症状や遺伝子情報のデータベースを作成しました。登録した項目は診断、性別、年齢、家族歴、発症にいたる経過、臨床症状、臨床・病理所見、遺伝子変異、選択した治療法、治療効果、臨床経過、転帰等です。

診断基準案

現在、世界的に明確な診断基準はありません。診断基準の策定にあたっては、Rubinstein-Taybi症候群の原因遺伝子CREBBPの遺伝子変異を有する14例(変異陽性例)の表現型を重視し、主要徴候の出現頻度を算定し、各徴候の出現頻度を評価し、診断基準に反映させたものを策定中です。

遺伝子診断について

遺伝子診断のご案内(医師向け情報)

CREBBP遺伝子は、16番染色体短腕13.3に位置し、遺伝子全体で約154Kb,エクソン31から成り、2242アミノ酸に翻訳されています。Rubinstein-Taybi症候群はCREBBP蛋白のハプロ不全により生じます。CREBBP遺伝子は、転写活性因子CREBとTFIB(転写因子)と結合し、CREBによる転写活性を促進する働きを有します。また、CREB以外の多くの転写活性化因子を活性化するコア・アクチベーターとして機能することもわかってきており、RTSが、顔面奇形や骨格系など多臓器障害をきたす原因として、分子遺伝学機序が解明されつつあります。

 

1.     CREBB遺伝子の遺伝子診断が可能です。慶應義塾大学医学部小児科先天異常遺伝子診断センターにより実施されています。一般的に遺伝子検査の感度は60%です。

検査でCREBB遺伝子に異常が同定されなくても、Rubinstein-Taybi症候群を否定することはできません。依頼の方法についてはhttp://www.dhplc.jp/info/info.htmlをご覧下さい。

2.     下記のような理由により、一部の患者さんにおいて変異が同定されません。

・患者がRubinstein-Taybi症候群以外の疾患を有している。

CREBB遺伝子以外の原因遺伝子(EP300遺伝子など)が存在する。

・現在使われている遺伝子診断法(PCR-シーケンシング法)では検出し得ないタイプの遺伝子異常が存在するなどの可能性が考えられる。

3.     2.については、特に数十塩基から数百キロ塩基程度の欠失ないし重複や、イントロン等翻訳領域以外の部分の変異が原因と考えられている。

現在、PCR-シーケンシング法に加え、MLPA法やアレイCGH法などの診断技術を確立し、診断精度の向上を行っております。

神経症状の実態調査

Rubinstein-Taybi症候群のお子さん(成人)の神経症状の経時的変化の調査を行いました。

ルビンシュタイン・テイビ症候群児者の家族会 「こすもす」の方を対象に、「Rubinstein-Taybi症候群の心理・行動面に関するアンケート調査」を行いました。

現在、アンケート結果を解析中です。

 

患者・家族会との連携

ルビンシュタイン・テイビ症候群児者の家族.会「こすもす」主催する年次集会(交流会)へ参加し、本研究事業の情報提供を行いました。